ロボットに感謝

犬山 翔太
 
 私は、整理整頓が苦手である。
 服や雑貨、アクセサリー、本、DVD、靴など、衝動買いしてはすぐ飽きて使わなくなってしまう物が家の中に散乱している。
 私だけならまだいいが、妻も、息子も、整理整頓が苦手なので、どうしようもない。
 そのうち、近所の人々がごみ屋敷と騒ぎ立てないか、マスコミが噂をかぎつけて自宅に取材に来ないか心配になるほどである。

 そんなとき、私は、テレビの通販専門チャンネルで「三年使わなかったものを捨ててくれるロボット」を購入した。
 扇風機やファンヒーターならその季節に必ず使うから一年以上の不使用期間はできない。
 本やDVDなら、三年間使わないものも多くあるが、それは、本当に必要なら少し使っておけば、また三年間の猶予ができる。そんなふうに気にも留めないものが、本当にいらないものとして捨てられていくことになるはずだ。

 私は、このロボットが家に届いて以来、文明の進歩に感謝した。本当に便利だからである。
 いつのまにか物置が片付いている。使っていなかった自転車、置き物、古いテレビなどが綺麗になくなっている。ロボットが捨ててくれたのだ。
 さらに私の周囲にあった煩雑に感じるものも、なくなっている。随分前に読み終えた本、度が合わなくなった眼鏡、機種を変えて使わなくなった携帯電話など。
 妻も、サイズが合わなくなった服やお中元でもらって使い道がなかった食器などを整理できて喜んでいる。子供も、小さい頃に使っていたおもちゃが自動的に捨てられることに不満はなさそうだ。

 私は、週1回充電するだけで、ここまで精力的に働いてくれるロボットをあたかも家族のように感じるようになった。
「ほんとにお前は、優れものだ。お前のおかげで、こんな快適な生活ができるんだからな」
 私は、ロボットの肩を軽く叩いてねぎらいの言葉をかけた。

 その頃、このロボットの開発会社では、二人の紳士が先ほどの男に売ったロボットについて会話をしていた。
「この男も馬鹿だね。我々の開発したロボットに感謝して重用しているようだ」
「ははは。感謝したいのは、こちらの方なのにね」
「確かに。あのロボットは、ロボット自身が捨てるものをすべて記録している。だから、我々は、高価な物を捨てるときは、ロボットから直接受け取れる。リサイクル業としては、これ以上のものはないね」
 2人の紳士の元に、女性社員があの家庭で捨てたものの一覧表を持ってきた。
「おお、ありがとう。あの男は、指輪をするのが嫌いらしく、結婚指輪が捨てる対象となった。彼の妻は、サファイアのネックレスをするのがもったいないという理由で捨てる対象となってしまった」
「なるほど。積算してみると、あの男の家庭が捨てたものの資産価値は、既に五百万円を超えているよ」
 二人の紳士は、顔を見合せてほくそ笑んだ。
「かなりの儲けだ。それにしても、指輪やネックレスがなくなったことには、いつ気づくかな」
「さあ、気づくのは、当分先じゃないかな。何せ、次、使うときまで何年かかるか分からないからね」
「そのときになって大騒ぎしても、もはや手遅れ。それにしても人間は、愚かだね。自分で不要なものをうまく処分していけば、かなりの金額が手に入るのに、ロボットに頼るから1円も手に入らない」






(2009年12月作成)




犬山ノート:
 どうして不要なものを購入してしまうのだろう、と時々、自分が嫌になることがあります。また、もらいものは、興味がなければ全く使わずにどこかにしまったまま、というのが大量にあったりします。
 最近、引っ越しをしたのですが、家の中にあるもののうち、半分程度は不要なものであるように感じました。そんな不要なものをうまく整理することができたなら、経済的な効果はかなりのものだろうと考えてはみたのですが、結局のところ、不要なものを買わない、ため込まないというのが最善の方法なのでしょう。


Copyright (C) 2009- 究極のストーリー All Rights Reserved.